この記事は
「約束のネバーランド」総括です。
ネタバレあります。
はじめに
全181話。
約4年間の連載に幕が引かれました。
今回は総括記事です。
総括!?
最後まで少年たちの知恵と勇気とほんのちょっとの武力で鬼に立ち向かった姿勢がやはり一番嬉しかったです。
ともすればバトル漫画へとシフトしがちな「週刊少年ジャンプ」の中で、方向転換をせずに完遂してくれたのは、最初の「GFハウス脱獄編」に見惚れた身としては心から望んでいたことでした。
「GFハウス脱獄編」の魅力は、なんといっても大人との知恵比べ。
全てにおいて上回るママをどう子供たちが欺いていくのかが楽しかったんですよね。
見事ママの裏をかいて脱獄を果たしたエマたちの活躍は、非常に爽快でした。
まさか女の子が自分の耳を削いで、囮に使うなんて考えもつかなかったですから。
あまりにも痛々しかったですが、エマの決意のほどが窺える名シーンだったと思います。
そうして見事脱獄を果たしたエマたち。
敵は比べるまでも無く強大なモノになりました。
規模も正体も不明な不気味な鬼たち。
流石に知恵と勇気だけで乗り切るのは難しいんじゃないかと思ったものです。
「バトル漫画化したら嫌だなぁ、でも、今まで通りの方法で状況を打破する術がどうにも想像できないな…。」
そんな心境でした。
少なくとも大長編になる覚悟はしたものです。
それが終わってみたら、これでしょ。
バトルと言えるのは、「GP編」の5体の貴族鬼達との死闘と最終決戦でのレグラヴァリマ戦だけ。
必要最低限で済ませてくれた。
あとは知恵と勇気だけで乗り切ったところが素晴らしいうんぬんかんぬん…と
この後も長々と書いてましたが、以下消去。
本稿の主旨に入りますね。
今作を象徴する3つの別れ。
そこに込められた悲劇の先に見える希望に焦点を当てます。
絶望の中にも希望があったからこそ、暗くなりがちな物語に絶えず光が差していたのでしょう。
コニー
3つの別れの最初の1つ目は当然ですけれど、コニーです。
あどけない年頃の可愛らしい女の子。
笑顔の眩しい女の子が、いきなり殺されてしまう所からエマたちの物語は始まりました。
1話読んだ時の衝撃と辛さは、筆舌に尽くしがたいものがありました。
残酷な物語が嫌いなので、殊更「この新連載は読まなくても良いかも」とまで考えたものです。
でも、圧倒的な面白さを感じたのも事実で。
読み続けるべきか、辞めるべきか。
当時は迷いに迷ったものです。
散々悩んだ末に、僕は悲しみの中にある希望に期待することにしました。
大切な家族であるコニーの死に心を痛め、これ以上家族が死ぬのは嫌だと涙を流すエマに賭けたのです。
これ以上残酷な犠牲は、彼女が防いでくれるんじゃないかと。
農園の真実を暴き、全員の生きる道を提示した別れでした。
ノーマン
2つ目は、ノーマンですね。
今でこそノーマンが生きてるのは当たり前みたいな感じでしたが、リアルタイムで読んでた時は「は?」ってなりましたよ。
てっきりノーマンは出荷されること無く、その機に乗じて脱出するものだと思っていたので。
まさか彼が死を受け入れて、エマたちの為に犠牲になる道を選択するなんて。
このままだったら、読者にとってもエマたちにとっても、ただただ辛いだけの展開。
絶望しかない訳ですが、読者にだけはちゃんと希望を用意してくれていました。
出荷された回にあからさまな生存フラグがあったことですね。
流石にあの時点で、ノーマンのその後の展開なんてちっとも想像できてませんでしたけれど、彼が生きてる望みが提示されただけで、「勝ったなガハハ」な気分ですよ。
この時は、鬼をも屠れる仲間たちを引き連れ、鬼の世界の全貌を掌握した上で再登場するとは、ホント露ほども考えられませんでしたけれど。
エマ
哀しい別れの中にあった希望の光。
最後はエマですね。
最終回、初読ではすっきりとしませんでした。
「これで終わり?」とどこか消化不良感を覚えたのです。
コミックス最終巻に描きおろしエピローグでもないと…と考えていたのですが、2度目を読んでその考えは変わりました。
先に提示したように、常に悲しみの別れの中にも大きな希望を込めてくれた物語。
最後のエマもそうなんだろうなと。
きっと、この先エマの記憶が戻るようなことは無いんでしょう。
そういうような奇跡やご都合主義は起こらないんだと、どこか信頼を寄せています。
「信頼」というと、なんだかおかしな言い回しですけれど、それ以外の的確な言葉が無いから、これで間違いじゃないのです。
エマは家族を忘れたまま。
二度と思い出は戻らない。
けれど、この先の未来の記憶は積み重なっていくことは約束されたわけです。
ノーマンを筆頭に、彼らはその状況で満足したのですよね。
ただ生きてくれているだけでいい、それだけで構わないと。
忘れるという悲劇の先に、未来の思い出という希望を見せて終わっている。
これはつまり、過去よりもっと素晴らしくて掛け替えのない未来が待っているということを示した最高のハッピーエンドなんですよ。
少なくともノーマンたちはそのつもりのはずです。
これまでがそうであったように、エマの時もそうなるはずで。
であれば、これ以上の続きは蛇足でしか無く、そう思った瞬間に「もう少しエピローグが欲しいかも」という気持ちはかき消えました。
絶望しか無かった1話のラストから、このような明るいラストを迎えられるとは。
感無量ですね。
終わりに
ぶっちゃけ40巻とか50巻とか覚悟してた4年前。
20巻という短さで完結したのが凄い。
壮大なスケールで展開しつつも、無駄が無くキレキレのスピード感で、疾走した4年。
最初から最後まで気を抜くことなく楽しめました。
面白い作品でした。