「宇宙よりも遠い場所」考察 知人から友達、そして親友へと至る絆の物語

この記事は

「宇宙よりも遠い場所」の感想です。
ネタバレあります。

はじめに

コロナ禍の影響で、思いがけずに長期休暇を貰った為、この機に溜め込んでいたあれこれに手を出しました。
その1つとして、積んでいたBDを開けました。
という訳で、「よりもい」全4巻13話を視聴しました。
見たのはリアルタイム以来ですが、うわぁやっぱり名作だわ。
笑えて泣ける最高のエンターテイメント作品ですね。

この感動は是非に残しておこうということで、筆を取りました。
題して「親友になるまでの見せ方が素晴らしい!!」です。

では、始めます。

3巻までの雑振り返り

最初から計算づくであったのか、BD4巻の構成は、非常に区切りが良く収録されていました。
という訳で、3巻までをざっくりと振り返ります。

準備編

第1巻は
STAGE01 青春しゃくまんえん
STAGE02 歌舞伎町フリーマントル
STAGE03 フォローバックが止まらない
の3話を収録。
キマリ達3人が住んでいる群馬県館林市をメイン舞台として、彼女たちの出会いと出発までの道程が描かれています。
まだまだ「知人」だった時ですね。
それもそのはず。
キマリと報瀬は、同じ高校でもクラスが別なので面識がありませんでした。
たまたまキマリが駅で報瀬の落とした100万円を拾ったことで知り合ったのです。
日向は、そんな2人の通う高校の近所にあるコンビニでバイトに明け暮れており、これまたたまたま2人の会話を耳にして「南極行き」に興味を持って…という出会い方。
3人が行動を起こすと、既に南極行きが決まっていた結月が「自分の代わりに行ってくれないか」と相談してきて。

個人的にピックアップしたいのが「フォローバックが止まらない」で描かれた優月のドラマですね。
芸能活動が忙しくて、友達を作れなかった優月。
勇気を出して友達になろうとした2人も優月の付き合いの悪さから早々に離れていってしまい、「どうしたら友達が出来るのか」悩んでいた彼女。
やはり3人の関係が気になったのか、どういう集まりなのかキマリ達に尋ねていました。
この時点では、知り合ったばかりだった3人は、優月にそのまま素直に返答しているのですよね。
直後優月も3人と行動を共にするものの、彼女の中では「知り合い」としての付き合いが始まったという認識だったのでしょう。

出発編

第2巻は
STAGE04 四匹のイモムシ
STAGE05 Dear my friend
STAGE06 ようこそドリアンショーへ
長野・乗鞍高原で合宿をして、いざシンガポールはチャンギ空港へ。
遂に南極へ向けて物語は大きく動き出します。

放送中に「何故このタイミングで?」と首を捻ったのが「Dear my friend」でした。
突然のめぐっちゃんの絶交宣言。
「なんでだよ!?」ってなりましたもん。
「出発の朝に爆弾投げ込んできて、何したいん!?」というのが率直な感想でした。
彼女からしてみたら、出発という区切りの時だからだったんでしょうけれど、キマリに同情しちゃう事件でした。

視聴2周目にもなると、違った見方が出来るものですね。
めぐっちゃんは「キマリ達と出会わなかった優月」なんだ。
幼い頃に出会った2人は、めぐっちゃんからすると「私が付いていてあげないと」というどこか上から目線の付き合い方だったと。
報瀬と出会ってからどんどんと「めぐっちゃんからの独り立ち」を始めたキマリに対して、もやもやとした気持ちを膨らませていた彼女。
裏で色々と画策して「わざと嫌われようとしていた」めぐみはキマリに「友達」だと言葉にして欲しかったんじゃないかな。
自分がキマリのことを上から見ていたから、分かんなくなっちゃったんでしょうね。
キマリから友達だという言葉を引き出して、免罪符としたかったのかもしれない。

キマリからしてみたら親友だっためぐみも、めぐみからしたら違っていた。
知人とは何か、友達とは何か、親友とは…。
深く考えちゃうと定義しにくい関係性を、めぐみというキャラクターを通してあやふやにしてみせたのかなと。
第5話は、物語全体を「キマリ達4人が親友になるまでの物語」として見た場合の大きなターニングポイントとなっていると思ったのです。

船上編

第3巻は長い長い船旅の章。
収録されているのは、
STAGE07 宇宙を見る船
STAGE08 吠えて、狂って、絶叫して
STAGE09 南極恋物語(ブリザード編)
外海の波の激しさは、ヤヴァイらしいですね。
乗って3分で船酔いする自分にしたら、地獄でしかない。
南極に行くには、当然に船酔いとの戦いはあって。
作中でも船酔いに苦しむ姿が克明に描かれてました。
それ以外にも多くの困難に直面した4人。
こういった苦労を1つ1つ共にすると、知らず知らず仲は深まっていきますよね。

いよいよ最終章・南極編へ

第4巻は、遂に南極での物語。
収録されているのは、
STAGE10 パーシャル友情
STAGE11 ドラム缶でぶっ飛ばせ!
STAGE12 宇宙よりも遠い場所
STAGE13 きっとまた旅に出る

どの時点で、彼女たちの関係性が変化したのか?
実のところ「知人」から「友達」に変わった瞬間というのは不明で、「ここ!」と言える話数も不確かです。
個人的には4話の乗鞍高原合宿の時点で友達と呼べる間柄だったと見てるんですが、この辺りは人によって意見が分かれるかもですね。
ただね、「友達」から「親友」に変わったのは、間違いなくこの4巻だと断言します。
キマリだけは、他の3人ととっくの昔に親友だと思っていたようですが、両想いになったのは、4巻。
理由を書きますね。

「友達」と「親友」の違い

僕の理論は極めてシンプルです。
「友達」と「親友」の違いは、気恥ずかしい悩みを話せるか否か。
たったこれだけです。

「パーシャル友情」は、優月の物語。
ずっと抱え込んでいた友達のこと。
初めて彼女は、自分たちの関係性に言明するわけです。
キマリに「親友なんですか?」と返したり、「友達になろうと言われてません」と言ったり。
分からないし、自信も無いし、不安だから「友達誓約書」を渡そうとしたり。
心の中を曝け出して、通じ合って、「親友」になった。

「ドラム缶でぶっ飛ばせ!」は、日向の物語。
日向って4人の中では一番精神年齢高くて、人間関係の潤滑油に徹してたじゃないですか。
例えば5話でめぐみが流していた「噂」に激高していた報瀬を宥めたのも彼女でした。
一歩引いた視点から、まぁまぁそう怒んなさんなと冷静でした。
日向はさ、文字通り一歩引いた関係を築くことに腐心していて。
だから、冷静でいられたんだと思うの。
だけれど、高校時代の部活での面倒くさい人間関係を掘り起こされて、カッとなってしまって。
報瀬のグッジョブですよ。
日向の殻に踏み込んで、事情を聞き出して、友達面した連中を一喝して。

これさ、相手が報瀬達じゃなかったら、日向は絶対はぐらかしてたよね。
彼女達相手でも躊躇してたのだから、ただの友達くらいでは話してなかった筈。
報瀬の強引さもあるけれど、聞き出せたのはそれだけ日向が3人に心を赦していた証左でしょう。

「宇宙よりも遠い場所」は、最後報瀬の番ですね。
ここまで友情を育んできた4人だからこそ、このエピソードは成り立つんですよ。

南極チャレンジ1次隊天文観測所で報瀬のお母さんの遺品を探し始めるキマリ、日向、優月。
「見つかるわけないでしょ」と報瀬は1人止めに入るシーン。
ifの話を語っても詮無いことですが、敢えて「もし、このシーンまでの4人が友達レベルの関係性だったなら」?

キマリはこれは十中八九捜索に率先して動いてましたね。
間違いないです。
キマリはそういう子。

日向は多分止めてるよね。
自分の内側に踏み込ませたくないから、他人の内側にも踏み込まない。
どうしても報瀬の問題に深く踏み込むことだからこそ、彼女はその直前で踏み止まる筈です。

優月はどうだろう。
報瀬本人が探さないで良いと言ってるから報瀬側に付くかもしれないし、キマリを見て「仕方ないですね」とか言いつつ探してるかもしれない。

作中のように3人ともに自分の意思で、報瀬が止めてるにも関わらず頑なに手を止めなかったこと、それ自体が4人の絆の深さを表現していると思いました。

めぐっちゃん

最後にめぐっちゃんについても。
絶交を無効とされためぐっちゃん。
キマリが都度現状をLINEで報告しても塩対応していためぐっちゃん。

最後の最後にキマリに黙って北極に行っていると報告してきます。
この「キマリに黙って」というのがポイントだよね。
「友達に相談もせずに、結局離れていった」のかと取るとこではなくて、むしろ逆。
「独りで考えて計画して、大きなことを成し遂げた」というのは、めぐっちゃんにとって、「キマリと肩を並べたと胸を張れる行為」に他ならなくて。
そうまでして、キマリに追いつこうとしていためぐっちゃんは、無効を受け入れたと見て間違いないんですよね。

めぐっちゃんも「心情を吐露したら親友」の法則に当て嵌めれば、5話の時点でその資格を有していた。
あとは彼女の心ひとつという状態で、そのアンサーが、「北極旅行」だった。

すべてにおいて丸っと収めてくれたことで、後味良くなっていました。

キマリ達4人。
キマリとめぐっちゃん。
どちらに関しても親友になるまでの見せ方が素晴らしいです。

このアニメ。
神ですね。

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