背景はクオリティを左右する
少しアニメのお話をしてみます。
僕がまだ学生だった頃。高校生とかの頃かな。もう10年以上は昔の話。
深夜アニメも本格的に本数が増え始めつつあった時期の話。
その頃に放送されたアニメのDVDを引っ張り出してみると、大きな違いに気付きました。
何作か見てのイメージですが、背景美術のレベルが全然違うんですよね。
今の方が全体的に背景が綺麗なんです。
、
さてと。
パッと見の映像のクオリティって、どこで判断されるんでしょ?
動画…キャラの動きという人が最も多いかもですね。
小学生時代、ディズニー映画を見ては「動きスゲェェェ」と思ったものです。
アニメの事を何も知らなくても、ヌルヌルっとスムーズに動いているのを見ると感動しますよね。
他はどうでしょう。
作画に拘る人はキャラクターの作画でしょうか。
僕は作画に然程拘るタイプでも無いですし、というか、知識とか無いので違う点で判断してます。
やっぱり背景美術に目が行くんですね。
例えば30分アニメの場合、画面の中に描かれる”描写量”としては、人物4:背景6くらいでしょうか。
割合としては。
この数字は結構適当ですけれど、ただ、人物より背景の方が”量”としては多いと感じます。
背景が無いカットって少ないですしね。
画面内に於ける背景の占有率はとっても大きいですし、故に背景が綺麗だったりすると、それだけで目を奪われるのです。
このアニメのクオリティ高いなぁと単純に想ってしまいます。
これは僕が写実主義だからというのもあります。
現実の風景等を写真と見紛うほどに忠実に描き上げる術に強い憧れを感じますし、それを実際に目の当たりにすると感動します。
だから、最近の写真かと思う程綺麗な背景のアニメを見ると、「凄い!!」と感じるのです。
…まあ、本当に写真を加工して背景としているアニメもあるらしいですけれども(汗
そ、それはさておきまして…。
背景の力って凄まじいな〜と感じるのですね。
「よつばと!」の背景
「よつばと!」の話に入ります。
この漫画も深夜アニメ同様背景が”進化”してます。
試しに1巻と(現時点での)最新11巻を読み比べてみました。
全然違うんですよね。
何が違うかというと、書きこみ量が全然違う。
試しに樹の作画で比較。
といっても相変わらずの写メですので、分かりづらくて申し訳ありませんです。
先ずは1話2ページ目の樹。
スクリーントーンを使って、そこにペン入れをして影を付けたり、立体に見えるよう描かれています。
この時点で充分に凄い立派な樹に見えます。
2枚目は11巻73話。
栗拾いのお話の時の1カット。
トーンを一切使わず、全てペンで描き込んでいます。
全体的な印象としては、1巻ではトーンを普通に使用しているのですが、11巻になると殆ど使われていないんですよね。
特に背景には、全くといっていい程使われなくなっています。
これは綾瀬家の居間にあるソファーでもそうです。
1巻では、トーンが使われていたソファーも11巻ではトーン無し。
トーンの代わりにペンで描き込んで描き込んで描き込みまくっているんです。
好みの問題だと思うのですが、僕は断然最近の方が好きですし、凄いと思っています。
途轍もない労力が掛けられているだろうことは容易に想像できますし、何よりその背景の美しさに感動します。
ところで、何故こんなに背景に力を入れるようになったのでしょう。
トーンを排して、その分描き込み量を増やしているんですから、間違いなく「背景に力を入れている」と見れると思うのです。
何故なのか?
考えてみました。
「よつばの日常」にリアリティを
毎年発売されている「よつばと!」の月めくりカレンダー。
実写背景(写真)の中でよつばが遊んでいる「イラスト」で綴られた写真カレンダーです。
究極的には、この漫画はこれを目指しているのかもしれません。
「よつばと!」という作品は、「よつばの日常」を描いていて、それを大切にしている作品です。
どんな日常作品よりも、より現実に近い日常を描こうとされています。
些細な描写も丁寧に省略せずに描いているのです。
あずま先生のブログでもこの事の重要性について触れています。
「よつばと!」をアニメ化しない理由に関してのエントリーですが、必要な部分だけを抜粋させて頂きます。
例えば、よつばが綾瀬家に遊びに行くってシーン。
よつばがドアを開けて走っていって「こんにちはー」と言う。
カットをポンポンといくつか使って、数秒で終わりそうなシーンです。
それでいいなら出来そう。
でも、「よつばと!」なら、よつばがよいしょよいしょっと階段をおりてきて、てけてけと廊下を歩き、
でんっと玄関に座ってヘタクソに靴を履き、よっこらしょっと重い玄関のドアを開けて、元気よく家を出て行く。
そういう、普通アニメでカットされそうな描写もやらないと、アニメにする意味が無いと思うんです。
アニメどころか、通常の日常をテーマとした漫画でも、カットしそうな描写にも力を入れる作品。
それが「よつばと!」という作品なのかと。
どんな作品よりも、より現実的に。
描写や世界観をリアルにすればするほど、そこで元気いっぱいにはしゃぐよつばもリアルになる。
だから、背景にリアリティを求めている。
背景描写に力を注いでいるのは、こういう事なのかなと。
より写実的にという意気ごみが感じられるんですよね。
そうそう。同じくあずま先生のブログに、こんな書き込みもありました。
私は基本的に背景のリテイクが多い。
細かいとこにも難癖をつけるのでアシスタントも大変だよ。
出来上がった背景を見ると、本当に大変そうです。
けれど、そんな先生とスタッフさん達の仕事が、作品全体のクオリティを底上げしていて、かつ、よつばの世界により現実感を与えている気がします。
まとめ
あくまでも人物は漫画らしく。
だけれど、その”漫画のキャラ”が生きている世界は、現実に限りなく近い世界である。
寧ろ現実でありたい。
そういう気持ちが、背景をより素晴らしいレベルへと昇華させているのかなと。
そんな「よつばと!」の12巻。
遂に発売間近ですね!!
3月9日なので、もう少し先ですがw
1年以上振りなので、楽しみで仕方ありません。
参考URL:あずまきよひこ.com
リテイクのこと http://azumakiyohiko.com/archives/2008/08/29_231400.php
よつばとアニメ http://azumakiyohiko.com/archives/2008/12/05_093234.php