はじめに
映像世界に引き込まれ、浸りきった圧巻の106分。
「君の名は。」という不可解なタイトルの謎が解かれた時の満足感は筆舌に尽くし難いものがありました。
期待を大きく、大きく上回ってくれた凄すぎる映画でありました。
先入観
「Wind -a breath of heart-」。
僕が新海誠監督の名前を初めて知ったのが、このタイトルでした。
アニメ版で知って、原作について興味が湧いて公式サイトだったかな?
オープニング映像の一部をネットのどこかで見て美しい背景が印象的な映像を作る監督だな〜という認識を持ったことを覚えています。
(改めて公式サイトを覗いてみたのですが、どこにも動画が無いですね。デモムービーでも見たのか?youtubeだったのか???)
ただ、それだけなんです。
「言の葉の庭」を見たいな〜と思っていたものの、結局見ず仕舞い。
だから今作が新海監督とのファーストコンタクトと言っても過言では無かった訳です。
そんな僕は、何故か監督の作品についてある先入観を持っていました。
1つは、やはり背景が綺麗だという点。
太陽光など「光」を駆使し、空気感まで映像に作り出しているような美麗な背景に拘っている監督という先入観。
実際予告映像からも十分に感じ取れてましたし、本編では美しい世界観(背景美術)のお陰で作中世界にどっぷりと浸れました。
2つ目は、悲劇的な物語。
ハッピーと言うよりもバッド。
明るくは無く、どちらかと言えば暗め。
しっとりとした雰囲気の世界観・物語を得意とされているというイメージ。
何故このような先入観を持っていたのかは自分でもはっきりとはしません。
ただ、「Wind」の映像からの勝手な思い込みかなとか。
「切ない」とか「儚い」というイメージがよく似合う、そんな繊細な映像だったと記憶しています。
今作も予告映像では、どこかコメディチックな展開を交えつつも、切なくも儚い恋物語が淡々と描かれるのかなと思っておりました。
この先入観は決して間違いでは無かったとは思います。
切なかったし、儚かった。
冬の空気のようなピンと張りつめた様な物語がそこにはありました。
しかし。
しかしですよ。
それだけで終わらなかった。
想像だにしなかった展開があって。
タイトルの意味の謎がすーっと氷解し。
映画的な見所がしっかりと終盤に盛り込まれ。
タイトル通りの大満足なラストを迎える。
凄かった。
ただただ凄かったという言葉しか見つからない、そういう映画として見終わった。
以降、もうちょいとネタバレを含んで言及します。
「君の名は。」
冒頭にて。
ぼんやりと、瀧と三葉は違う時代に生きてるんじゃないかと言う考えが頭に浮かびました。
根拠も無く。
強いて挙げるなら、三葉の住む糸守町が「田舎過ぎる」ように見えたから…。
三葉の住む時代は50年程昔なんじゃなかろうか…と(笑
瀧と入れ替わった三葉が余裕でスマホ操作してるのを見て、即座に違うなと頭を切り替えましたがw
それでも直感に近いこの疑問が合っていたからビックリですよ。
で、納得出来たんです。
タイトルの意味に。
「君の名は。」
予告では、2人が入れ替わってしまうというよくあるSFシチュエーションが全面に出ていました。
更には、性別も住んでる場所も異なる見ず知らずの人間と入れ替わっちゃったから「お前は誰だ…お前の名前は?」と2人が問いかけてるシーンもあって、だからこそ「君の名は。」というタイトルになっていると一定の理解が出来ます。
でも、これはおかしい。
入れ替わった直後こそ「お前は誰だ?」になりますが、すぐに相手の名前なんて知れますよね。
実際本編でも序盤のうちに入れ替わった相手の名前を知り、自分達が置かれた状況も知り、お互いのスマホでルール決めや情報交換まで行って、この入れ替わり生活をしているとダイジェストで描写されていました。
早々に相手の名前が分かった以上、作品全体のタイトルに冠する程重要な問い掛けでは無いんですよね。
ここまでは予告で十分読み取れることですし、だからこそ、なのに何故「君の名は。」としているのか疑問だったのです。
2人の生きている時間が異なっているから。
三葉は瀧の住む時代の3年前の世界に生きている…と。
これが分かった瞬間成程な〜といっきに疑問が解けましたね。
相手の名前をすぐに忘れてしまう理由付けとしては、とてつもなく自然な理屈です。
この辺SFの解釈如何でどうとでも考えられちゃう事ではありますが、元々起こり得ない(一種の)タイムトラベルという現象。
現象が終わったら、その現象に関する一切の記憶を失ってしまうという設定があってもおかしくないのかなと。
同じ時間軸に住む相手の名前を忘れちゃうというのは理解しにくいけれども、「本来出会うはずのない過去(未来)の人間」の記憶を失うのはSF設定としてはごくごく自然に思えます。
明言されていた訳では無い(というか明言しちゃうと野暮)ので、間違った解釈かもしれません。
けれど、僕はこういう解釈で、勝手に納得出来ちゃったのです。
ただ、これだけなら、ここまで凄いとは言いません。
驚かされたのは、「三葉が死んでいた」というショッキングな事実。
ロマンティックな再会を彩る舞台装置になるんだろうなと勝手に思っていた彗星が、元凶として使われていたという驚愕の展開。
そこから、過去の三葉達を助けるべく瀧が奮闘するという熱くも「ハラハラドキドキ・どうなるんだこれ!?」となるクライマックスに入った頃には、もう夢中ですよ。
三葉が髪をバッサリと切った本当の理由、オープニング映像での2人の身長差の謎などなど。
色々な疑問が解かれては、怒涛の如く畳みかけられる「どうなるんだ一体…」という展開。
なによりもなによりも、最後に「君の名は。」という台詞で締め括るセンスですよ。
忘れてしまったけれど、どこか潜在意識下で「探していた誰か」と再会し、お互いがそうだと理解。
晴れてくっついて終わり…と克明に描かれてしまうよりかは、それを匂わす程度の終わりの方が余韻に浸れる。
想像の予知を残す終わり方の方がこの作品に…「君の名は。」というタイトルの作品には相応しく思えます。
忘れてしまったけれど、忘れたくない存在。
お互いの身体に入っていたのだから、分からなくても何となく相手が分かってしまう。
3年前、「まだ瀧が三葉を知らなかった」状態の瀧にそれとは知らず会いに行った三葉が抱いていた気持ちを真実足らしめる2人の再会。
偶然では無く惹かれあった再会。
お互いの名前を確認し合う2人。
ああああ、野暮すぎる。
こんなことを感想で書くことすら野暮なんだけれど、書かずにはいられない〜。
台詞で明言せずに芝居だけでこういう2人の運命の再会を魅せてくれるラストによって、非常に心地いい余韻に浸れました。
「君の名は。」というタイトルの謎が先ずあって。
その謎が解け納得した上で、このタイトル通りの・このタイトルに相応しい締めをしている。
凄い映画を見た。
心から満足感を得られたんです。
終わりに
BD購入決定ですね。
近年は気に入った作品でも泣く泣くスルーしてるのですが、これは買うべしですね。
迷わず購入を決意しましたもの。
こんな表現されても伝わりにくいでしょうけれど、それ程惚れ込んだということで。
兎に角凄い映画でした。