バトル漫画の「弱い敵から順番に出て来る」問題の克服法の考察

この記事は

「バトル漫画における「敵をどう用意するのか」問題」を読んでの記事です。
幾つかの作品のネタバレありますのでご注意下さいませ。

はじめに

先日、痕跡症候群さんやゴルゴ31さん等で紹介されていましたので、気になって読んでみた記事がありました。

「バトル漫画における「敵をどう用意するのか」問題」 やまなしなひび−Diary SIDE−狂っているのは誰ださん

私達が生きている現実ではあまり見かけない「敵」をどう用意するのか

に着目して、バトル漫画に於ける様々な世界観パターンから追求されておりました。
非常に興味深い記事でした。
この記事内のコメントも面白く、特に

それより弱い奴から順番に出てくる方が実は問題ですw

という一文に深く惹かれました。

確かにwww
そこは、まあお約束としてツッコんではいけない点な気がしますけれど、漫画を中心にしてちょっとだけ考えてみます。

バトル漫画の不文律ですよね

先ず当たり前の事として、作品として成立させる事。
これが前提で、かつ、侵される事の無い不文律ですね。
バトル漫画の基本です。

次第にハードル(敵の強さ)を上げていく事で、より楽しませていくというもの。
パワーインフレについては、僕も過去に何度か記事にしちゃいました。

ただ、一口にバトル漫画と言っても様々で、弱い奴から順に強い敵が出て来る事が絶対的ルールでいられるのは、主人公の強さの成長を主眼に置いている作品に限られます。
そうじゃない作品に於いては、これは必ずしも当てはまらないかなと。

例えば、そこまで主人公の強さを意識してない作品であったり、主人公が最初から最強レベルの作品であったり。
という事で、幾つかバトル漫画の方向性とでもいうのかな。
バトル漫画の種類によって場合分けし、それぞれで「弱い奴から順番に出て来る」事について書いてみます。

最初から主人公が最強レベルのバトル漫画

これは換言すれば「主人公の強さの成長に主眼を置いていないバトル漫画」。
多少の成長はあっても、そればっかりを目的としていない作品群ですね。
先程も書いたように、ここに当て嵌まる作品は、「弱い奴から順番に出て来る」ルールの適用外な事が殆どかなと。
ルールが当て嵌まる作品も当然あるでしょうけれど。

「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」とか「銀魂」とか。(「銀魂」は一部エピソードに限ればバトル漫画とも見做せるので。)
スポーツ漫画で言えば「H2」等もここに含まれるかもしれません。(バトル漫画では無いけれど)

このパターンのバトル漫画の場合は、大抵「弱い奴から順番に出て来る」という事がありません。
殆ど主人公の方が強かったというオチがついちゃうので。
「るろうに剣心」の場合、明らかに剣心より強かったのは、志々雄真実くらいだった印象です。
その志々雄にしたって、「殺人剣を振るうか否か」という差に於いて死闘を優位に進めていた訳で、志々雄の方が完全に上だったとは言い難い。
特訓によって更に強さに磨きを掛けたから剣心は勝てたのかもですけれど。

「剣心」以上にバトルに主眼を置いていない「銀魂」に至っては、強い敵も出てくれば、(銀さんより明らかに)弱い敵も出て来る。
やはり「弱い奴から順番に出て来る」というルールの適用外に思えます。

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作者自ら失敗キャラと断じられた石動先輩は明らかに弱かった。

閑話休題。
兎も角として、主人公が最強レベルにいると、必ずしもそれ以上強い敵を出す必要性は無くなり、結果として初っ端から強い敵が出て来る事もあります。
主人公の成長をバトルの結果で示す必要性が無いから、このルールは適用されない事が多いのかなというのが僕の考えです。

バトルに主眼を置いていないバトル漫画

少し微妙な括りであり、人によっては意見が分かれる部分ですけれど。
僕の中では、連載中の作品では「ONE PIECE」とか「HUNTER×HUNTER」が此処に当て嵌まります。
バトルというよりもアドベンチャー寄りの作品達ですね。

過去にも書いた事があるのですが、この中でも「HUNTER×HUNTER」は「弱い奴から順番に出て来る」要素を完全に無視した漫画ですね。
連載初期からヒソカ登場とか、ドラクエで最初の町を出た直後にゾーマにエンカウントするようなものですしね。
お散歩する大魔王ってネタ、「銀魂」あたりで見たなw
ヒソカの他にもイルミやらゾルディック家やら幻影旅団やら…。
ゴンを遥かに凌駕する(その上、未だに強さで追いついてもいない)キャラがこれでもかと出て来ている。

「ONE PIECE」は、「HUNTER×HUNTER」とは異なり、「弱い奴から順番に出て来る」という要素を多少なり含んでいます。
けれども、弱い奴から出て来る明確な理由付けがなされている漫画でもあります。

ワンピ世界に於いて、海というのは強さの指標の1つに使われております。
ルフィ出身の東の海が最弱に設定されており、グランドライン前半、グランドライン後半(新世界)と次第に”強く”なっている。
同じ海に居る敵同士は、強さに大きな差は無く、故に強い敵の後に弱い敵とエンカウントする事もあります。
七武海の後に普通の(というとなんか変ですがw)海賊団と戦うなんてこともありましたしね。

この漫画に於いては、主人公が最弱の海から出発し、徐々に強い海へと漕ぎ出る様を描いているからこそ、次々と強い敵と出会う事に説得力を持たせています。

これと同じ事が、主人公の強さの成長を主眼に置いているバトル漫画の一部にも当て嵌まります。

主人公の強さの成長に主眼を置いているバトル漫画

最も分かりやすいのは、格闘技ものですね。
「はじめの一歩」を例に取ってみます。
フェザー級にエントリーした一歩が、ランカーを駆け上がり日本王者になるまでを描いていた序盤。
ここを切り取って見てみますと、やっぱり非常に分かりやすい理由がありますよね。

デビュー戦は小田裕介。フェザー級4回戦のボクサーでした。
この試合に勝った一歩は、3試合目にして東日本新人王トーナメントへ。
トーナメントなのです。
基本的に、1回戦より2回戦、2回戦より3回戦と次第に強くなっていってもおかしくありません。
特にトーナメントの上位にまでいけば、運だけで勝ち残る事も少なくなり、実力者ばかりが顔を揃えるのが普通です。

東日本新人王になった一歩は、続く西の王者である千堂武士と対戦。
その後も上位のボクサー達と対戦していくのですけれど、分かりやすく順位によって力が上と定義された中でのバトルです。

「ONE PIECE」同様に強い敵と次々と当たる事が当たり前となる設定です。
設定も何も現実のプロボクシングの流れなので、いちいちこうして上げること自体が野暮な気もしますw

まとめ

「一歩」にも言える事ですが、現実の世界に則った世界観であり、かつ、一般的な人間と大差無い身体能力のキャラクター達を戦わせているバトル漫画に於いては、あまり気にする必要の無い事なのかなと思うんです。
件の参照先記事の言葉をお借りするならば

「現実の世界」を舞台にする

漫画ですね。
ヤンキー漫画は典型ですね。

特別格闘技を習っているとか、体格差に大きな開きがあるとか、喧嘩慣れしてるとか。
年齢や体格、性別さえ整えられれば、そういう事でも無い限り、普通の人間同士の強さの差なんてたかが知れてます。
勝ち負けは、戦う度に変わるのが一般的です。
それ程均衡していて、故に「敵が強くなっていく」ように見えても、他のバトル漫画とはちょっとばかし意味合いが異なるのかなと。

「一歩」は、同じプロボクサー同士で階級も同じ。
一度一歩が勝ったからといっても、必ずしも一歩の方が強いとは言い切れないですよね。
再戦すれば、王者とはいえ一歩も負ける可能性を秘めているんです。
こうして見れば、別の意味でも「弱い敵から順番に出て来る」とは言い切れない作品だと思います。

また、「惑星のさみだれ」のようにわざわざ敵が強くなっていく事を作中で明言している作品もあります。
敵であるアニムスが地球破壊というゲームをしているので、こうした設定になっていて、これもまた「弱い奴から順番に出て来る」事に説得力を持たせている作品です。

物語は積み重ねる度に、読者はより強い衝撃を欲します。過激さをエスカレートさせるというのかな。
バトルを主眼に置いた場合、強い敵の後に弱い敵が出て来ても多くの人は冷めてしまう事でしょう。
描き方によって、批判を回避する事は十分可能なのでしょうけれども。
「弱い奴から順番に出て来る」というのは、宿命みたいなもので、ここにツッコんではやっぱりいけない気もしますw
特に理由付けが無い作品が多いですから。

でも、中にはしっかりと説得力を持たせたり、理由付けしたりする作品もあるのかな〜と。
本当に一部の作品しか触れていませんけれど、1本1本しっかりとこの観点で読み返すと、何らかの理由が見つかる…かもですね。

(ここに書いた事が正しい訳では無いんですけれどもw)

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